カミーユ・コローの描いたフランス北部の街ドゥエの鐘楼を訪れて

バルビゾン派を代表するコローが晩年通った街ドゥエ

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カミーユ・コロー「ドゥエの鐘楼」(1871年)、ルーヴル美術館所蔵

フランス北部にあるドゥエ(Douai)は2016年に生まれたオー・ド・フランス地方の一部を形成しているノール県とパ・ド・カレ県の文化の象徴でもある巨人鐘楼をもつ街です。ドゥエは戦士の姿をしたゲヨン(Gayant)と呼ばれる巨人とその妻と子供3人の巨人家族にちなんで「巨人の街」としても親しまれていて、毎年7月に行われるフェット・ドゥ・ゲヨン(Fête de Gayant)の際には多くの観光客で賑わいます。この祭りはユネスコ世界遺産にも登録されていて、5人の巨人がドゥエの街を行進します。

そして、もう一つの街のシンボルが19世紀のフランスを代表する画家の一人でもあるカミーユ・コロー(Camille Corot)も描いた鐘楼です。「ドゥエの鐘楼」と名付けられたこの彼の作品には彼の鐘楼とドゥエへの愛着が感じられます。パリ生まれの彼はなぜドゥエで向かったのでしょうか?

バルビゾン派の画家カミーユ・コロー

モネに代表される印象派がフランスを席巻し始める半世紀ほど前、パリの南東約60キロのところにあるフランソワ1世が築いたフォンテーヌブロー宮殿でも知られるフォンテーヌブローの森(forêt de Fontainebleau)にあるバルビゾン(Barbizon)という村にある共通点を持った画家が集まり始めました。古代のギリシャやローマの美的感覚を模倣し、歴史や神話がテーマを重視していたアカデミーが絶対的な絵画の権威であった当時にあって、後にバルビゾン派と呼ばれる画家たちは、ウィリアム・ターナー(Wiliam Turner)など同時代のイギリスの画家たちや17世紀のオランダの画家の風景画家たちを敬愛し、自分たちの感情や心理状態を学校で教えられるような技法に左右されず自由に描くことを望みました。そんな彼らの中心にいたのがカミーユ・コローでした。

1796年にパリに生まれた彼は若い頃ルーヴルに通い、アカデミーの流れを組む師の元で絵画を学びました。しかし、その後はノルマンディーやフォンテーヌブローを中心に野外で活動し、またフランス国内のみならずイタリアまで足を伸ばし、旅行をしながら絵を描く生活をしするようになります。30代の終わりにはアカデミーの主催していた展覧会ことサロンでも成功を収めるまでになりました。

フランス北部のアラスとドゥエへ向かったきっかけとは?

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現在のドゥエの街並み

コローは1830年に一度だけフランス北部を訪れていたのですが、本格的に訪れるようになったのは1847年に彼の作品を購入した画家のコンスタン・ドュティユー(Constant Dutilleux)との出会いがきっかけです。ドゥエ生まれでアラスにアトリエを持っていた彼はコローを自宅に招きます。そこから2人は行動を共にするようになり、ドゥエやアラスはもちろん、フランス北部のダンケルク(Dunkerque)やサントメール(Saint-Omer)やベルギー、オランダなどを旅して創作活動をするようになりました。そして、ドュティユーを介してコローに出会った画家たちは彼から影響を受け、彼らは後にアラス派(École d’Arras)と呼ばれるようになりました。コローとアラス派の多くの作品はアラス美術館(Musée des Beaux-Arts d’Arras)でも鑑賞することができます。

ドゥエの鐘楼を訪れる

ドュティユー死後もコローと画家たちの交流は続き、晩年の75歳の時にドゥエで描いた作品が「ドゥエの鐘楼」です。前景に見られる建物の正確な描写と共に街を包む空や雲には、彼独特の繊細な光の表現が見て取れます。実は、この絵の中には自分の姿を描いていて、絵の前景近くの中心部で女性に話しかけている男性がコロー自身です。

彼らのいた道の奥には鐘楼が今も変わらず佇んでいます。14世紀後半に建てられたこの鐘楼は1471年に火事で燃え、現在のものは市役所(hôtel de ville)の隣に1475年にゴシック様式で建てられたものです。頂上にはリールやアラスなどにも見られるフランドル地方のシンボルでもあるライオンが街を見守っています。

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ドゥエの鐘楼と市役所

この鐘楼の内部はドゥエの観光案内所のツアーでのみ見学が可能です。1時間のガイドツアーでドゥエの鐘楼を介して街の歴史を知ることができ、頂上部分にある62の鐘で構成されたカリヨン(複数の鐘を鍵盤状にして演奏できるようにしたもの)を間近に見ることができます。この鐘の音色は定時になると聞くことができ、中世から変わらず街の時間を刻んでいます。鐘の音に耳を澄ましながら、コローの眺めた風景に思いを馳せてみてはいかがでしょうか?

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