フランスにおけるクレープの故郷ブルターニュ地方を訪ねて

ガレット(ソバでできたクレープ)

小麦粉とそば粉を使った2つのクレープの違いとは?

こんにちは。フランス政府公認ガイドの濵口謙司(@tourismjaponais)です。

皆さんはクレープ(crêpe)と聞いてどんなものを思い浮かべますか?

小麦粉ベースの極薄のパンケーキで、生クリームやフルーツ、チョコレートなどを包んだものを思い浮かべる方が多いと思います。

実は、クレープはフランス北西部のブルターニュ地方の名物料理でもあります。

しかし、フランスでクレープ屋さん(crêperie)に入っても、日本で食べるようなクレープを見かけることはあまりありません。

なぜなら、日本でよく食べる1970年代に原宿から生まれた日本独自の発展を遂げたものだからです。

意外と知られていないフランスでのクレープの起源

歴史家によると、既に紀元前7000年にはクレープの原型が作られていたとも言われます。

クレープがブルターニュに登場したのは13世紀。十字軍の際にアジアから持ち帰ったソバの栽培を始めていたことから、その粉を使って丸くて薄い生地を焼いたことに始まります。

ナントにあるアンヌ・ド・ブルターニュ像

ブルターニュでクレープが食べられるきっかけを作った人物がアンヌ・ド・ブルターニュ(Anne de Bretagne)です。彼女は15世紀末から16世紀初頭にかけてのブルターニュ女公であり、二人のフランス王シャルル8世とルイ12世の王妃でもありました。

アンヌ・ド・ブルターニュは育ちが早くてすぐ収穫ができるソバの特性に目をつけ、ブルターニュでの栽培を推奨しました。これによりブルターニュはソバの一大産地となりました。

ブルターニュ地方は年間を通じて温暖で、酸性の土壌だったことも一つの要因だと考えられています。中国とモンゴル原産のソバですが、大陸の反対側のフランスではガレット、極東の日本ではそばとして食べられているのは興味深いですね。

そば粉で作ったクレープ(ガレット)

その後、小麦粉を使ったよく知られるクレープ生地が作られるようになりました。クレープの発祥地のブルターニュ地方では、小麦粉を使った方をクレープ(crêpe)と、フランス語では別名「黒い小麦粉」とも呼ばれるソバを使ったクレープのことをガレット(galette)と呼び、区別して呼んでいます。

ちなみに、細かく言うと、ブルターニュ地方でもレンヌなど東部ではそば粉のクレープをガレットと呼ぶのですが、西部ではクレープと呼びます。同じブルターニュでも呼び方に地域差があるのが面白いですね。

ガレットとクレープのそれぞれの特徴とは?

小麦粉の方を使ったクレープは柔らかい食感が特徴で、よくジャムやヌテラ(Nutella)というイタリア生まれのチョコレートクリームなどのような甘いものと食べることが多いです。こちらはどちらかというとデザートとして出されます。

クレープ
小麦粉でできたクレープ

ガレットの方は基本的に塩気のある具材とともに調理されることが主流で、チーズ、ハム、ジャガイモ、ベーコンなどと一緒に出されます。小麦のクレープに比べるとざらっとした食感が特徴です。

店によってこだわりがあり、焼き具合が違うので、色々なレストランを食べ歩きをして自分の好みを見つけるといいかもしれません。カリカリからしっとりとした食感まで様々で、具材の種類も店によって大きく異なります。

また、クレープ屋によってはジャムなどと一緒にデザートとして出されることもたまにあります。小麦粉とは違う食感が楽しめるのでこちらもオススメです。

近年はブルターニュ地方のサン・マロやカンカルなどに店を構えるBREIZH Caféが日本にも店舗を増やしているように、ガレットの名前も少しずつ知られつつあります。

ソバがグルテンを含まず、ミネラルやビタミン、プロテインが豊富で健康にも良い食材であることも、ソバ麺やそば茶以外の調理方法としてガレットが注目されている理由かもしれません。

ブルターニュ地方を旅行する際はぜひクレープと一緒に本場のガレットを味わってみてください。