リヨン旧市街を散策してイタリアのルネサンスの息吹を感じよう

ユネスコ世界遺産に指定されているリヨン旧市街を散策

こんにちは。フランス政府公認ガイドの濵口謙司(@tourismjaponais)です。

ユネスコ世界遺産に指定されているリヨン(Lyon)の歴史地区の中でも見どころの一つが、フルヴィエールの丘のふもとにあるヴュー・リヨン(Vieux Lyon)とも呼ばれる旧市街です。

リヨン歴史地区

サン・ジャン大聖堂(Cathédrale Saint-Jean)を中心に広がるこの旧市街の広さはなんと24ヘクタールにも及びます。1964年にフランスで最初に保存地区に指定されたその理由は、ヨーロッパでもヴェネチアに次いで2番目の規模のルネサンス建築の宝庫だからです。

イタリアで始まったルネサンスがリヨンに

ルネサンスとは?

ルネサンス(Renaissance)とはフランス語で「再生」を意味し、15世紀(14世紀という説もあります)にイタリアで始まり、その後ヨーロッパに広がっていく文化運動のことを指します。

ルネサンス以前は神を中心としたカトリック的価値観がヨーロッパ中を支配していました。そこから離れ、人々は人間の美しさや価値観を中心に据えることに重きを置くようになりました。

この考え方は古代ギリシャ哲学の考え方から大きな影響を受けたことから、当時の芸術家たちはあらゆる芸術分野に置き、古代ギリシャやそれを受け継いた古代ローマを模範としたのです。

こうして生まれたのがルネサンス美術で、文学や美術、彫刻に建築など幅広い分野に展開されました。

フランスに伝播したルネサンス

イタリアで始まったルネサンスですが、フランスにその影響が及ぶのは16世紀になってからで当時の国王フランソワ1世(François 1er)が芸術を推奨したことで広がっていきました。

フランソワ1世はレオナルド・ダ・ヴィンチを招聘したことでも有名です。ちなみに、ダ・ヴィンチがイタリアからアルプス山脈を超えてフランスに来るときに抱えていた3枚の絵の1つがあの「モナ・リザ」です。

イタリアのルネサンスの影響がとりわけ大きかったのがフランスの第2の都市のリヨンでした。

リヨンでルネサンスが広がった理由としては、パリに比べてもイタリアにより近いという地理的要因、そして温和な気候が挙げられます。さらには、ドイツやオランダなどのヨーロッパ北部と南部のイタリアの間にあることから、商業が栄え、富が集まるようになったことも考えられます。

また、フランソワ1世がリヨンにイタリアなどとの絹の交易の特権を与えたことも経済的な発展を後押ししました。それに加え、リヨンはイタリア戦争のフランスの前線基地だったことから、イタリアのルネサンスの影響を色濃く受けていくこととなったのです。

南仏やイタリアを思わせる色使いの建築の数々

DSCF0226
サン・ジャン通り(Rue Saint-Jean)

16世紀のリヨンはまさに国際都市で、交易のために訪れた外国人が次々と定住していきました。その結果、人口がどんどん過密になり、新しい住居を作る必要に迫られました。

こうして1520年頃から現在の旧市街を形成する複数階の建物が次々と建てられることとなったのです。イタリアや南仏の国境沿いを思わせるカラフルな色使いは当時の趣向を象徴しています。

これらの建物は正面部分は直接道に面しており、建物の中に入って廊下を進んでいくと、建物の奥にある中庭に出ることができます。中庭には螺旋階段を取り込んだ塔があることも珍しくありません。

これは当時はまだ現代のような階段がまだフランスには普及しておらず、螺旋階段を外に設置するのが一般的だったためです。そして、中庭からさらに進んでいくと後ろにはさらに別の建物が繋がっているという構造になっています。

リヨンのルネサンス建築の中庭
中庭から空を見上げた景色

リヨンの旧市街にはこのような道から建物の中の通路を通り裏側の道に抜けることができる、まさに秘密の抜け道が多く存在しています。これはトラブール(traboule)と呼ばれるものでリヨンならではのものです。

「横切って通る」というラテン語の語源そのままに建物の中を横切るこのトラブールは、かつては旧市街に沿って流れるソーヌ川(la Saône)で荷積みをする船に迅速に向かう手段として使われていました。その後、このトラブールは職人たちが雨の時でも衣服や織物を濡らさず運ぶために重宝されました。

230あるというこのトラブールは、現在でもそのうち40は一般にも解放されており、人気の観光スポットとなっています。

中には一見しただけでは入っていいのか分かりにくいものもあるので、ぜひ観光案内所などで下調べするか、観光案内所が催行しているガイドツアーに参加すると効率よく回れます。

リヨンのトラブール
ブフ通り(16 rue du Boeuf)のトラブール
IMG_5044
ブフ通りのトラブールを抜けると見られるバラ色の塔(Tour Rose)

普通に歩くと1〜2時間で回れる旧市街ですが、あちこちにあるトラブールやサン・ジャン大聖堂や数々の美術館など見どころがたくさんあり、じっくりと回ろうと思うと旧市街だけであっという間に時間が過ぎていきます。ぜひゆったり目に時間をとって旅行の計画を立ててみてください。

リヨンはルネサンス期と変わらず今も世界中から多くの観光客が訪れる国際都市です。街を歩くと聞こえてくる様々な言語を耳にしながら、昔の雰囲気をそのままに残した旧市街を歩くと、少しだけ当時にタイムスリップしたような気分になりますよ。