パリからTGVで1時間半!レンヌ観光で知っておきたい木骨造りの建物の秘密とは?

ブルターニュ地方最多の286の木骨造りの建物があるレンヌの街並み

2017年の7月2日に開業するル・マンレンヌ間の高速鉄道TGVの新路線の開通により、パリとレンヌの間が45分短縮されて最短で1時間25分で結ばれるようになります。そこで、この機会にブルターニュ地方を観光しようと考えている方やモン・サン・ミッシェル行きのバスへの乗り継ぎのためにレンヌ駅を利用する予定だという方のために、レンヌのシンボルの一つとも言える木骨造りの街並みの観光のポイントをご紹介したいと思います。実はレンヌはブルターニュの中でも一番多くの木骨造りの家が残されている街なのです。その数は286に上り、2位のヴァンヌ(Vannes)の171を抑えてダントツなのです。

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サン・ジョルジュ通り(Rue Saint-Georges)

レンヌの木骨造りの家の特徴とは?

木骨造りの家は中世に発達したもので、木材を組み立てた骨組みと粘土に藁を混ぜた土壁で構成されています。木骨造りの建物がレンヌに広まったのには2つの理由があります。1つ目はパリやロワール渓谷などのように地下に石灰石の坑道がなかったこと。2つ目は頑丈で長持ちするコナラなどの森林が近くにあったことです。これらの要因は密接に関係しています。なぜなら鉄道が発達していなかった19世紀までは建物を建てる際にかかる費用で一番の割合を占めていたのは資材の運搬でした。また木材は石材に比べて扱いやすく安価なため好まれたこともあり、費用を抑えるために木骨造りの建物が選ばれたのはごく自然な成り行きともいえます。

木骨造りの家と一口に言っても、アルザスやノルマンディーなどフランス中に点在しており、外見や特徴も異なりますが、レンヌの素晴らしいところは建築年代が違う中世から18世紀までの間までの幅広く色々な種類の建築が楽しめることです。ブルターニュ地方、特にレンヌならではの特徴としては高層のものが多く、上に行くにしたがって下の階を覆うように上の階が外へ張り出しているのが特徴です(フランス語ではこの張り出し部分のことをencorbellementと言います)。

どうして上に行くほど建物が張り出しているのか?

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ラ・プサレット通り(Rue de la Psalette)

建物の安定性を考えれば建物の下層部分を広くするのが普通です。なのにレンヌの一部の上層部分が張り出している木骨造りの建物を見るとどうしてわざわざこんな風に建てたんだろうという素朴な疑問が湧いてきます。これにもちゃんと理由があります。

京都を観光されたことがある方は「うなぎの寝床」という言葉を聞いたことがあると思います。家の間口が狭く奥行きが深い京都の町家の特徴で、これは近世に建物の間口によって税額が決められていたため、負担を軽くするために幅を狭くしたためです。実はこれは国が違うフランスでも同じで、そのためレンヌでは幅が狭く奥行きがある建物が建てられました。それに加え、上層部には規制がないためにスペースを確保するために張り出し部分が作られるようになったのです。

15世紀末から16世紀初頭に特に顕著だったこの建築構造は一階で商売をする商人にとってメリットがあり、雨が降っても買い物客がそのまま留まることが可能になりました。また、中世の石畳の道は中央部分に排水の溝ができていて、建物の上の階から物を捨てることもしばしばだったために身を守るのにも役立ちました。一方で、道を覆うように建物が立つことになり、火事の時の被害も大きくなることからこの張り出した建築は後に禁止され、後世に建てられた建物は地面に垂直に伸びたものが主流になっていきました。

1720年から現在へ

木造建築の最大の難敵は火事です。レンヌでは1720年に大火事が起き、約850〜900の家が火の海に飲み込まれました。そのため、木骨造りの建物を建てること自体が禁止されました。その後、約1000軒の建物が第二次世界大戦後を生き延びましたが、老朽化と街の再開発によって破壊を余儀なくされました。1970年代になってようやくその価値を認められ、現在では市や国の補助によって修復作業が進んでいます。レンヌの旧市街を中心に現在残っている286の木骨造りの建物は、幾多の火事や倒壊の危険に晒されながらも何世紀もの間生き残ってきたものなのです。

著者がオススメする写真映えする木骨造りの残る通りや広場を下記にまとめてみました。これを参考にレンヌ旧市街の散策を充実したものにしてみてください。

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シャン・ジャケ広場(Place du Champs Jaquet)

レンヌ旧市街で木骨造りの家並みが見られる著者オススメのスポット

  • サン・ジョルジュ通り(Rue Saint-Georges):ブルターニュ高等法院のすぐ近く
  • サント・アンヌ広場(Place Sainte-Anne):地下鉄のSainte-Anne駅すぐそば
  • シャン・ジャケ広場(Place du Champs Jaquet):ポストカードによく使われる場所
  • シャピトル通り(Rue du Chapitre)
  • ラ・プサレット通り(Rue de la Psalette)
  • リス広場(Place des Lices):フランス最大規模のマルシェが毎週土曜日に開催
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サント・アンヌ広場(Place Sainte-Anne)