文化遺産を救うための資金を宝くじで集める試み
この話の始まりは2017年9月に遡ります。フランス大統領エマニュエル・マクロンがテレビ番組の人気司会者のステファン・ベルヌ(Stéphane Bern)にある任務を依頼しました。その任務とは歴史や文化遺産に造詣が深いジャーナリストである彼に修復されず崩壊の危機に瀕している文化遺産を救うことでした。
その1年後、2018年9月3日。ステファン・ベルヌとロトなどを販売するFDJが中心になり、「文化遺産くじ(Loto du patrimoine)」という2種類の宝くじが発売されました。これは売り上げの一部をフランス国内の269の文化遺産の修復に使われるという画期的なものです。
3ユーロのロトと15ユーロのスクラッチくじの2種類で、1等はそれぞれ130万ユーロ(日本円で約1億7千万円)と150万ユーロ(約2億2千万円)。3ユーロの方の抽選はヨーロッパ文化遺産の日の前日の9月14日に行われました。また、15ユーロの方は1200万枚印刷されているそうで、スクラッチくじとしては高額にもかかわらず売り上げは好調なようです。
どのような文化遺産が宝くじで救われるのか?

ところで、肝心の文化遺産修復に充てられる金額ですが、この2つのくじの売り上げの10パーセントとなるとのこと。そのお金はフランス各地の269の文化遺産、特に海外県を含むフランス各地方から1つずつ選ばれた18の文化遺産の修復に優先的に使われます。
このリストが特徴的なのは、リスト内の修復を要する文化遺産の中には誰もが知るような有名な建物などは入っていないということ。そういった文化遺産には十分な修復資金が回される一方で、小さな地方の文化遺産は見捨てられてしまう傾向にあるからです。まさに、おらが街の文化遺産を救うプロジェクトと言えます。