ナントのレストラン「ラ・シガル」で美しいアール・ヌーヴォー建築に見とれる

重要文化財にも指定されている1895年創業のナントのブラッスリー

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どの街にもその街の「顔」と呼べるようなレストランがあります。伝統と格式が生み出す佇まいがそうさせるのか、普段より少しだけドレスアップして行きたくなるようなレストラン。口コミで広がった評判は空間だけでなく時間を超えて続いて行き、今も客足が絶えないレストラン。

パリから約2時間、ロワール川流域にあるフランス北西部の街ナント(Nantes)のグラスラン広場(Place Graslin)にあるレストラン「ラ・シガル(La Cigale)」はまさにそんなレストランと言えるかもしれません。1895年に創業されたレストランはその建物の美しさから訪れる人を料理以外でも魅了しています。

120年に渡って続く「ラ・シガル」の歴史

ナントのラ・シガル

ラ・シガルの建物は1894年に地元の建築家であり陶芸家のエミール・リボディエール(Émile Libaudière)によって建てられました。レストランの窓からは建築当時と変わらず18世紀末に創設されたグラスラン劇場(現在の建物は19世紀前半に再建されたもの)が見えます。ラ・シガルはこうした立地条件もあり、創業された当時から観劇の後に立ち寄る社交の場として栄えていたことは想像に難くありません。実は、シュルレアリスム(シュールレアリズム)運動の中心人物のフランス人の詩人アンドレ・ブルトン(André Breton)もここの常連でした。

華やかな内装は120年近く経った今でも色あせることはありません。中に入るとその色鮮やかな装飾に圧倒されます。いくつかの映画の舞台となったことも頷けます。そんな長きに渡ってナントの社交の場となったラ・シガルですが、1964年に転機が訪れます。家主が変わった事でセルフサービスの店として営業されることとなったのです。それと同時に、改築などによって建築当初の輝きを失わないように「ラ・シガル」は重要文化財として指定されました(下の動画は1966年のラ・シガルの様子を残した貴重な映像です)。

1970年代に入ると客足が途絶え、その存在が次第に忘れられるようになります。しかし、80年代に入り現在のようなブラッスリーとして営業されるようになり、まさに不死鳥のように蘇りました。こうして19世紀末から20世紀初頭のナントの文化の象徴とも言える「ラ・シガル」は今もかつての姿を保っているのです。

アール・ヌーヴォー建築の傑作

ナントのラ・シガルの内装

1914年に第一次世界大戦が勃発するまでの19世紀末から20世紀初頭にかけての時期は、パリの万博に象徴されるように、フランスでは産業や経済の発展などに伴う華やかな文化を誇った時代でもありました。ベル・エポック(Belle Époque)と呼ばれるこの時期の精神は芸術や建築にも宿されます。その一つがアール・ヌーヴォー(Art nouveau)と言われるヨーロッパや北米など全世界的な芸術運動で、ナントではこのラ・シガルの建物がその好例の一つと言えるのです。ちなみに、ビスケットメーカーLUのかつての工場(詳しくは下記の記事をどうぞ)もラ・シガルと同時期にナントに建てられたもので、同様に当時の街の活気が感じられます。

フランス中で愛されるビスケットLUの故郷ナントを訪ねて

ラ・シガルの店内を見渡すと、アール・ヌーヴォーの代名詞の一つでもある植物のモチーフをあしらった色とりどりのタイルが至る所に見られます。その中に混じって、下の写真のテーブルに見られるような白い服を纏ったセミのデザインがあちこちに顔を出しています。実は「ラ・シガル」はフランス語で「セミ」という意味なのです。まさに、店の看板娘といったところでしょうか。

ナントのラ・シガルのテーブル

これらのタイルを取り囲むように、繊細な木の細工や枠組みが店内の雰囲気に落ち着きを与えています。ガラス、木、タイル、モザイクなど異なる素材を使っているので、色だけでなく質感に幅を生み出しています。こうした様々な要素はまさにベル・エポック時代の建築の特徴とも言えます。

装飾のない部分を探すのが逆に難しい内装とは打って変わって、外装(本記事1枚目の写真)はギリシャやローマの古典的な建築を想起させるシンプルな作りとなっています。全体的には白とベージュグレーを基調としていますが、装飾に使われているターコイズ色とその補色関係にある黄色系統でアクセントがつけられています。このように、グラスラン劇場をはじめとした重厚な作りの建物の中に調和しつつも、ラ・シガルは個性を発揮することを忘れていません。

ナントのラ・シガル

街で人気のレストラン「ラ・シガル」

ラ・シガルにはその素晴らしい建築見たさに訪れる観光客が後を絶ちません。そして、忘れてはならないのはレストランとしてもとても評判の高いのです。朝7時半から夜0時まで、自家製の焼きたてのパン、新鮮な魚介類、質の高い肉などを使った料理で多くの人の舌を魅了しています。美しい建築とベル・エポック時代のナントを感じながら、美味しい料理とともに特別な時間を過ごしたい方はぜひ一度足を運んでみてはいかがでしょうか?

ラ・シガル公式サイト(フランス語)

 

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