第2次世界大戦中に戦火に包まれたダンケルクの数少ない生き証人
2017年9月の映画「ダンケルク」の公開とともにその名前が日本でも知られるようになった同名の街ダンケルク(Dunkerque)。1940年のダンケルクからの史上最大の英仏軍の撤退作戦が描かれたこの映画を見て、ダンケルクに行ってクリストファー・ノーラン監督が映画の中に込めたメッセージを現地で体感したいと思った方も多いはずです。映画の舞台となったダンケルクの海岸は、現在ではブローニュ・シュル・メール(Boulogne-sur-Mer)などと並びフランス北部屈指の海水浴場として知られています。
フランス北部のオー・ド・フランスに位置するダンケルクはベルギー国境にほど近く、フラマン語(オランダ語)ではDunkirkと表示されます。リール(Lille)やアラス(Arras)などの他の多くのオー・ド・フランスの都市同様に、ダンケルクはユネスコ世界遺産に指定されている鐘楼や巨人などのベルギーと共通するフランス北部の特徴的な文化を色濃く残す街です。
このように見どころがたくさんある歴史ある街ダンケルクですが、今回ご紹介する場所はとある住宅地です。なぜ住宅地をわざわざ紹介するのかというと、奇抜な家が立ち並ぶこのダンケルクの一角はアール・デコ建築の宝庫であり、その一部は重要文化財に指定されていて、街の歴史を重要な1ページでもあるからです。
カルティエ・エクサントリックと呼ばれる理由
風変わりな建築が並ぶこの地区はカルティエ・エクサントリック(Le quartier Excentric)と呼ばれています。エクサントリックとはフランス語(excentrique、英語ではエキセントリック eccentric)には2つの意味があります。一つ目は「奇抜な、風変わりな」、もう一つは「中心地から離れた」。
カラフルな色と奇抜な建物が並ぶこの住宅街はまさにexcentriqueにふさわしいのは言わずもがなですが、実際にこのカルティエ・エクサントリックはダンケルクの中心街から少し離れたところ*(徒歩で20分くらい)に位置しています。
*正確にはここはかつてRosendaël(フラマン語でRosendaal)と呼ばれていて、1972年にダンケルクに併合されました。