ロワール川沿いにあるナント近郊のボヘミアンな村トラントムーが人気の理由

好奇心をそそる入り組んだ小道とカラフルな色の建物

トラントムーの船着場
トラントムーの船着場

ナント(Nantes)中心街から船でロワール川を下ること10分。視線の先に小さな村が見えてきます。遠くからでもすぐ分かる特徴的な建物の数々は好奇心を掻き立てます。この小さな村の名前はトラントムー(Trentemoult)。日本ではほとんど知られていないこの村ですが、知る人ぞ知る人気スポットなのです。

トラントムーはナントのすぐ南にあるナント郡のルゼ(Rezé)という街の一部で、ナントを訪れた観光客がその噂を聞きつけてよく足を伸ばします。それもそのはずで、例年フランス国営放送のFrance2で放映されている人気番組「フランス人の好きな村(Le village préféré des Français)」の2015年の候補にも選ばれているほどです。

しかし、なぜこの小さな村がこれほど多くの人を惹きつけるのでしょうか?それは一度村に足を踏み入れるとすぐ分かります。

ナントで最も住みたい場所の一つトラントムー

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トラントムーから見たナント

トラントムーの船着場から渡し船を降りて、後ろを振り返ると遠くにナントの街並みが見えます。その中でも埋没しない存在感を放つ黄色とグレーのクレーンは、かつて造船の街として栄えた産業の中心地としてのナントの象徴でもあります。実は、19世紀から20世紀にかけて、このトラントムーから造船所に多くの人が働きに出ていました。その際に移動の手段として使っていたのが当時は蒸気で動いていた渡し船でした。今ではこの渡し船は夏は観光客、それ以外の季節は通勤通学の人によって利用されています。

船着場付近には個性豊かな建物が並んでいます。モザイクを施した建物や、19世紀末から20世紀に建てられたであろう古典的な建築要素を取り入れたモダンな建物、そしてナント生まれで今や世界中で食べられているビスケットメーカーのLUの文字が踊るレトロな建物まで様々です。

トラントムーにはフランスの街には必ずと言っていいほどある教会や広場はありません。なのでロワール川沿いのレストランのテラスに自然と人が集まります。各々の家が思い思いの色で自分を主張し、地元のアーティストがその創造力豊かな絵の数々で細い路地の壁に彩りを与えています。この他の場所では見られない独特な雰囲気と、大都市ナントの近くの喧騒とは無縁であることから、今や不動産屋の入居待ちリストにはトラントムーでの新生活を夢見る人の名前がずらりと並んでいるほどです。

フランス中で愛されるビスケットLUの故郷ナントを訪ねて

トラントムーの船着場付近
トラントムーの船着場付近

こうした村の持つ独特な雰囲気を映画監督が目をつけないわけはなく、実際にトラントムーは何本かの映画の撮影地としても知られています。中でも一番有名なのは1991年にカトリーヌ・ドヌーヴ(Catherine Deneuve)主演で公開された映画「La Reine blanche(邦題「恋路」)」でしょうか。実は、今でもその時のセットとして使われた建物(川沿いにあるAu confort moderneと書かれた建物)が保存されています。

多くの家がカラフルな理由は村が漁村だった歴史にあり

トラントムー(Trentemoult)の街並み
トラントムーの街並み

今やナントでも人気の観光スポットのトラントムーですが、18世紀までは小さな漁師の町に過ぎませんでした。現在の村の姿から漁村だった過去は想像するのが難しいですが、カラフルな家並みは村の伝統が今まで続いている証拠でもあるのです。実は、この色とりどりの建物が生まれたきっかけは、船の船体に塗るための塗料が余ったので家に塗ったことなのだそうです。村がオシャレに見えるその理由は昔からの伝統が今も守られているに過ぎないのです。

村の奥に入っていくと庭のある立派な佇まいの家が軒を連ねています。これらの建物は19世紀の村の歴史の証人たちです。19世紀に入ると漁業は衰退し、代わりにロワール川沿いにあることから沿岸貿易で発展をしました。ナントの港の近くにあることからトラントムーの住人の中から士官が雇われるようになり、船長たちが自らの力を見せるかのように豪邸を建て他のです。

トラントムーの街並み
小道が入り組むトラントムー

船長たちの中には当時は珍しいヤシの木を植えて、自身の成功を誇示する者もいました。そのヤシの木のおかげで、ロワール川沿いにいるのにもかかわらず、カラフルな街並みも手伝って南国のどこかに来たかのような錯覚を覚えたりもします。実際に村の外に出るとすぐに、大型スーパーなどが立ち並ぶ交通量の多い大きな道路があり、その落差に驚きます。これはトラントムーではいかに村の外とは違う時間が流れているかを象徴しているとも言えます。

トラントムーは小さい村なので1時間くらいあれば十分見ることが可能です。また、ルゼの市役所付近まで行くと20世紀の建築を語る上で欠かせないル・コルビュジエ(Le Corbusier)の作品であるラ・メゾン・ラディユーズ(La maison radieuse)を見ることができます。ナントは見どころが多くすぐに時間が経ってしまいますが、スケジュールをゆったり目にとってぜひトラントムーも訪れてみてください。

ルゼにあるル・コルビュジエ(Le Corbusier)のラ・メゾン・ラディユーズ(La maison radieuse)
ルゼにあるル・コルビュジエのラ・メゾン・ラディユーズ

トラントムーへのアクセス方法

路面電車(Tramway)の1番線(Ligne1)に乗り、Gare Maritime下車。その後、停留所のすぐ近くにある船着場から船(Navibus)で約10分。路面電車の一日乗車券(Ticket 24h)も利用可なので、路面電車と船を往復で乗る場合はお得です(5ユーロ40セント、ちなみに1時間有効の乗車券は1ユーロ60セント)。

 

 

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