ヴィクトル・ユーゴーがその美しさを賞賛したゴシックの街、ヴィトレ

ブルターニュの玄関口にある小さな街ヴィトレの見どころとは?

こんにちは。フランス政府公認ガイドの濵口謙司(@tourismjaponais)です。

北はノルマンディー(Normandie)地方、東と南はアンジェ(Angers)やラヴァル(Laval)などのペイ・ド・ラ・ルワール(Pays de la Loire)地方に囲まれた人口約18000人の小さな街ヴィトレ(Vitré)はフランス北西部ブルターニュ地方の東端に位置しています。

ヴィトレ城
ヴィトレ城(Château de Vitré)

「レ・ミゼラブル」などを手がけた19世紀のフランスを代表する作家であり政治家のヴィクトル・ユーゴー(Victor Hugo)は、ドイツのバイエルン州のニュルンベルク、スペインのビトリアとともに、「手付かずで、全て揃っていて、統一の取れたゴシックの街」としてヴィトレを例に挙げています。

確かに、切れ目なく続く木骨造りの街並みとその中心にあるヴィトレ城(Château de Vitré)は、街を歩く私たちが21世紀にいることを忘れさせるほどです。

目次

  1. 木骨造りの建物が続くヴィトレの美しい街並み
  2. 街の中心にそびえるヴィトレ城
  3. ヴィトレの行き方とオススメの観光プランとは?

1. 木骨造りの建物が続くヴィトレの美しい街並み

ヴィトレの街並み
ヴィトレの街並み

ブルターニュ公国とフランス王国の境界にあったヴィトレは14世紀には商業の街としてその名を馳せていました。とりわけ高品質の麻を使ったキャンバス(平織りの麻布)で知られており、商品の包装や船の帆などに重宝されました。

西側ファサード(建物の正面部分)のゴシック様式の外観が美しいノートルダム・ド・ヴィトレ教会(Église de Notre-Dame de Vitré)の周辺には、メゾン・ア・ポルシュ(maison à porche)と呼ばれる玄関ポーチがある建物が見られます。

この壁から突き出た庇があるこの建物は同じブルターニュ地方のディナン(Dinan)などでも見られ、庇の下で雨に濡れずに商売ができることから商人と買い物客の双方にメリットがありました。この種の建物の存在はヴィトレがかつてキャンバスで財を築いたことを裏付けています。

ノートルダム・ド・ヴィトレ教会
ノートルダム・ド・ヴィトレ教会

ヴィトレにこういった木骨造りの街並みが多く残っている理由はルイ14世(Louis XIV)の時代の政策と関係があると考えられています。

ルイ14世の財務総監だったコルベール(Colbert)は、17世紀にヴィトレの商業を制限する政策を取りました。街の経済は減退し、商人たちは家を改築したり立て直すお金がありませんでした。無い袖は振れない彼らはせめて力を示そうと、高価で重宝された金属の酸化物を使った緑や黄色などの色で家の色を塗り替えたのです。

1840年の街の都市計画により、いくつかの建物は玄関ポーチを取り除くことを余儀なくされましたが、それでもヴィトレはブルターニュ地方の中でもこの種の木骨造りの家が数多く保存されている街の一つとなっています。

2. 街の中心にそびえるヴィトレ城

ヴィトレ城の正門
ヴィトレ城の正門

ヴィトレに向かう電車からも見えるヴィトレ城(Château de Vitré)は街のシンボルでもあります。ブルターニュがまだ独立を保っていた頃、コンブール(Combourg)、フジェール(Fougères)とともにヴィトレ(Vitré)はフランス王国との境界の防衛線を形成していました。

これら3つの都市には現在も当時の面影を残す城塞が残されています。そのうちの一つであるヴィトレ城は1000年の長い歴史を持ち、現在の城の外観になったのは15世紀です。

丘の上にあり、麓にはヴィレーヌ川(la Vilaine)が流れていることを考えても、防衛面で理想的な立地条件が揃ったこの場所に城を建てたのは偶然ではないでしょう。吊り橋がかけられた堀を渡ると、円錐状の屋根を持つ2つの塔を持つ門の存在感に圧倒されます。15世紀に建てられた際のゴシック様式が今も見られる部分です。

門をくぐると中庭に出ます。中庭は城壁と塔によって囲まれており、これはフィリップ尊厳王(Philippe Auguste)が建てたルーヴル城(現在のルーヴル美術館の地下にその跡が残されています)をモデルに中世のフランス中で作られた城の形を踏襲したもの。18世紀の末に火事で倒壊した領主の住居棟があった建物の跡地には、刑務所が作られました。現在ある市役所の建物は第一次世界大戦前に建てられたもので、モン・サン・ミッシェル修道院の修復に携わった建築家のポール・グーの設計です。

この城にはブルターニュでいち早くルネサンスの様式を取り入れたチャペルもあります。中庭にせり出すように作られた祭壇の置かれた部分は、トゥファと呼ばれるロワール渓谷で取れる石灰岩を使っており、その美しい石の白さと繊細な彫刻は一見に値します。このように、ヴィトレ城の中庭を見回すだけで、フランスの建築の歴史の流れを感じることができます。

3. ヴィトレの行き方とオススメの観光プランとは?

ゴシックの香りが今も漂うヴィトレはパリからも最短1時間半でTGVで乗り換えなしで行くことができ、レンヌから電車で最短15分で行けます。ヴィトレの旧市街は大きくなく、駅からも中心街まで歩いてすぐなので、半日あれば十分街の見どころを回ることが可能です。ぜひレンヌやブルターニュの近郊の街と合わせて観光してみてはいかがでしょうか?

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