フランス人が選ぶフランスで一番好きな建造物 とは?

インターネット総選挙で選ばれたのは「バロックの宝石箱にあるゴシックの真珠」

2015年に国営放送のFrance 2で放送された「フランス人の一番好きな建造物(Le Monument préféré des Français)」は2014年より放送されている人気シリーズの一つで、インターネットの国民投票で数ある候補の中からその年の一番を決めるものです。その名誉ある2015年の栄冠に輝いたのがアラス鐘楼です。下の動画は番組のアラスの部分の抜粋です(フランス語)。

フランボワイヤン・ゴシック様式の市役所(hôtel de villeと呼ばれ、現在は大半の市役所としての機能を別の建物に移管)から空に向かって伸びる鐘楼は高さ75メートルで、一階にある観光案内所でチケットを買えば、大時計のすぐそばまで登ることが可能です。バロック・フランドル様式の建物がずらりと並んだ2つの広場をはじめ、多くの歴史的建造物のあるアラスの360度のパノラマを楽しめます。

アラスの歴史を物語る建築

DSC_0949
アラスの鐘楼からの眺め

この鐘楼は1463年に建設が始まりました。疫病、戦争、資金不足など多くの原因で何度となく工事が中止することを余儀なくされましたが、建築家のジャック・ル・カロン(Jacques Le Caron)によって約1世紀後の1554年に完成しました。フランドル地方を象徴するライオンが立っている頂上の王冠部分は、当時アラスが属していたスペイン領オランダの君主でもあった神聖ローマ皇帝カール5世(Charles Quint)に敬意を表したものです。その後、フランスにアラスが併合された際にはルイ14世を象徴する太陽をライオンの持つ杖に加えました。

かつての姿に再建された街の象徴

第一次世界大戦の時に戦線にほど近かったアラスは、ドイツ軍によって街の3分の2が破壊されます。この鐘楼もその例外ではなく、大きな被害を受けました。再建に関して色々な方向性があった中で、アラスは同じく大部分が爆撃されていた2つの広場とともに大戦前と全く同じ形に再建することを選択しました。かつての姿を取り戻した鐘楼はユネスコの世界遺産に指定され、16世紀の建築当時から3代目となる頂上のライオンは今もアラスの街を見守っています。

dsc_0947
アラスの鐘楼(建物上部の塔)と旧市役所