ブルターニュの港町キブロンで夏のバカンスを楽しむ

美しい海岸線とビーチが続くキブロンを歩く

こんにちは。フランス政府公認ガイドの濵口謙司(@tourismjaponais)です。

海と灯台、切り立った岩とそれに砕けて散る波、そして「Bretagne」の文字。ブルターニュ地方でおみやげ屋さんに入るとそんなポストカードやお菓子の缶箱をよく見かけます。フランス人のブルターニュ地方に対する典型的なイメージなのかもしれません。

ブルターニュ地方にはサン・マロやディナールなど海沿いのリゾート地が多くあることから、夏になるとバカンスを楽しむ人たちで賑わいます。キブロン(Quiberon)もその一つで、その美しいビーチと手付かずの自然が保護された海岸線で知られています。

目次

  1. キブロン島、それともキブロン半島?
  2. 透き通るような海と砂浜のビーチ
  3. 手つかずの自然が残るコート・ソヴァージュ
  4. キブロンとオレー間のアクセスについて

1. キブロン島、それともキブロン半島?

大西洋に突き出るように南に伸びる半島であるキブロンは、オレー(Auray)経由で向かいます。レンヌから電車でオレーまで約1時間10分、パリ・モンパルナス駅からだと約2時間50分かかり、そこからはバスで約50分。

夏の間だけは「Le Tire-Bouchon」と呼ばれるローカル線の電車が運行されていることでも有名です(詳しくは記事の最後の「キブロンとオレー間のアクセスについて」参照)。

フランス語で「栓抜き」という意味のこの電車は、フランス語でembouteillage(ワインの瓶詰め作業)との言葉遊び。この単語はもう一つの意味の「渋滞」でよく使われます。夏の間は多くの人たちが車で押し寄せ、渋滞が発生することから、この「栓抜き」電車を使えばスムーズに旅ができるということです。

オレーを出てキブロンに近づくと、電車や車の両側の窓いっぱいに海が広がります。一番狭いところで幅が22メートルしかない砂州でブルターニュの「大陸」とつながるキブロン半島は、かつては満潮時には島になっていたそう。19世紀末にこの砂州の上に鉄道が敷かれてからも20世紀の初めに一部水没したことが2回あったとか・・・。

2. 透き通るような海と砂浜のビーチ

街の中心部にあるオッシュ広場(Place Hoche)からビーチはすぐ近く。

駅に着いて商店が並ぶ中心街へと足を延ばすと、道が徐々に下り坂に。それとともに次第にカモメの鳴き声が聞こえるようになります。期待は嫌が応にも高まります。そして、さらに坂を下ると、一面に広がる透き通った海が視界に飛び込んできます。きめ細かい砂浜が広がるビーチはバカンス地として人気な理由の一つです。

キブロンは19世紀の末から今のような海水浴場として徐々に知られるようになりました。その背景にはイギリスから始まりフランスへと伝わった療養目的の海水浴の広がり(詳しくは下記の「イギリス人が始めたフランスの海水浴場の歴史」を参照)、そしてフランス国内での現代的な観光が発達していったことがあります。

フェリーターミナルからカジノに広がるポール・マリア海岸(Plage de Port Maria)沿いに伸びるシャナール大通り(Boulevard Chanard)もそんな流れを受けて作られたもの。

シャナール大通り

19世紀末までは嵐や強風の度に姿を変えていたこのビーチは、1902年にこの通りが建設されたことにより、沿道にたくさんの別荘が立ち並ぶようになりました。こうして、キブロンは海水浴場のある避暑地として知られるようになっていったのです。

3. 手つかずの自然が残るコート・ソヴァージュ

キブロンを訪れたらビーチとともに訪れておきたいのが、7kmに渡って伸びる美しい海岸線のコート・ソヴァージュ(Côte sauvage)。波や風で削られた荒々しい花崗岩の断崖が続く景色はまさにブルターニュに来たという感じがします。

コート・ソヴァージュ

直訳するとフランス語で「未開の海岸」という意味のこの海岸では、1934年より景観を損ねるあらゆる建物の建築が禁じられています。また、自然保護区域にも指定されていることから、昔から変わらない景色を眺めることができるというわけです。

そういった理由もあり建築物のない海岸で一際目を引くのが、岬に佇む中世の英国のお城を思わせる建物。これは条例で海岸への建築が禁じられる前の1904年に紡績で財を成したジョルジュ・チュルポーという人が建てさせた邸宅。彼が「海の城」称したこの建物は、後に地元の人からその名前をとってチュルポー城(Château Turpault)と呼ばれるようになりました。

チュルポー城

現在は私有財産で一般には公開されていない建物ですが、昔のキブロン市長が「キブロンにとってのチュルポー城はパリにとってのエッフェル塔だ」と言ったように、キブロンのシンボル的存在でもあります。確かに、美しい海岸に佇む城はどこから見ても絵になります。

キブロンは海が好きな人ならきっと満足できるところです。コート・ソヴァージュにはハイキングコースが整備されているので、素晴らしい景色を見ながらウォーキングやランニングにもピッタリ。

また、半島を取り巻く湾は牡蠣の産地でもあり、ベル・イロワーズのイワシの缶詰でも知られるなど海の幸も豊か。1日の終わりは海岸沿いのレストランで夕日を眺めながら美味しい魚介類に舌鼓を打ってみてはいかがでしょうか?

4. キブロンとオレー間のアクセスについて

キブロンとオレー間は夏季限定で電車が運行しており、終点はキブロン駅(Gare SNCF de Quiberon)止まり。一方で、それ以外の期間だとバスでそこからさらに南下して海沿いにあるフェリーターミナル(Gare maritime)まで向かうことができます。SNCFなどで購入したチケットが電車(TER)かバス(Car)によって乗り場が変わってくるので要注意!

また、ローカルバス(Breizh Go)もキブロンとオレーを結んでおり、キブロン駅、またはフェリーターミナルから乗ることができ、巨石遺跡で有名なカルナックなどへも行くことができます。