赤ちゃんを運んでくる鳥シュバシコウ
時代とともにその生態は変わっているとはいえ、春に姿を表すシュバシコウは誕生の象徴であり、赤ちゃんを運んでくる鳥としても知られています。これは地元に伝わる「子供の井戸」と呼ばれるある伝承に由来しています。

この井戸ではかつて子供を授かりたい女性が来てお願いをしていたそうです。ストラスブールの旧市街にそびえる大聖堂の地下には池があり、そこでは生まれる前の赤ちゃんの魂たちが遊んでいました。そこの主であった地の精は女性の声を聞くと、銀色の船に乗って池を進み、金色の網で慎重に赤ちゃんの魂をすくい、シュバシコウに託しました。そして、シュバシコウは木骨づくりの家並みの街を飛び、赤ちゃんを揺りかごに届けたのです。
ちなみに、日本では赤ちゃんを運んでくる鳥といえばコウノトリです。シュバシコウはコウノトリの仲間ですが、厳密に言うと、日本など東アジアで生息するコウノトリはクチバシが黒いのが特徴で、クチバシの赤いシュバシコウはヨーロッパや北アフリカ、中近東に分布しており、似ているようで別の鳥です。
これはこの伝承が日本に入って来たときに、姿の似ているコウノトリに置き換えられたからとも言われているようです。ともあれ、クチバシの色は変わっても、この物語には国や文化を超えた普遍性があるからこそ日本で語り継がれているのかもしれませんね。