古き良き伝統的なレストランの総称、ブション・リヨネ
こんにちは。フランス政府公認ガイドの濵口謙司(@tourismjaponais)です。
フランス第3の都市のリヨン(Lyon)といえば美食の街としても知られています。
現代フランス料理を生み出したポール・ボキューズ(Paul Bocuse)はリヨンの食を語る上で避けては通れません。そして、もう一つの文化遺産とも言えるものがブション・リヨネ(Bouchon lyonnais)と呼ばれるリヨンにしかない大衆食堂のようなレストランです。
ブションという言葉は「藁束」のことを指し、かつて居酒屋の主人たちが自分たちの店の印としてドアに飾っていたことに由来するという説が有力なようです。

数世紀に渡って受け継がれているブション・リヨネの伝統
ブション・リヨネは普通のレストランとどう違うのか?という疑問を皆さんお持ちだと思います。ブション・リヨネは何なのかというのを一概に言うのは難しいのですが、基本的な定義は以下のようになります。
- 温かくて絵になる装飾のあるレストラン
- 豪快な店主
- 地元の名物を地元のワインと共に楽しめる場所
- アットホームな雰囲気
ブション・リヨネに入ってまず感じるのは温かいもてなしです。店内も活気にあふれ和気あいあいとした雰囲気で、労働者、お金持ち、有名人だろうが立場に関係なく食堂のようにつながった長いテーブルで食卓を囲みます。席につくときはお隣の人に「Bonjour」と言ってみてください。距離が近いので知らない人でもすぐに打ち解けることができます。
また、料理に関しては18世紀に出現した「リヨンの母たち」ことメール・リヨネーズ(les Mères lyonnaises)が生み出した伝統的な料理を受け継ぐもの。中産階級の家庭で腕を振るった後、彼女たちはやがて自分たちの店を持つようになりました。無駄に食材を捨てたりせずに、素材の切れ端まで使った彼女たちの料理は簡素ながらも洗練されたものでした。
その伝統がやがてポール・ボキューズにも受け継がれたのです。つまり、リヨン・ブショネで出される料理は現代フランス料理の源流とも言えるのです。
肝心な良い店の見分け方とは?

いざブション・リヨネで食事をしようとなった時、どこで食べればいいかと悩むところです。と言うのは、街を歩くと至る所にBouchonの文字のついたレストランがあるからです。一番簡単な方法は上記のような「LES BOUCHONS LYONNAIS」と書かれたロゴがある店を選ぶこと。
このロゴはブション・リヨネのブランドを守り、国内外にそのイメージを発信するために作られたもので、リヨンの観光案内所と商工会議所が認定したレストランにのみ与えられるものです。
リヨン市内にはこのお墨付きを得たレストランが現在約20あります(登録レストランはこちら)。

実際に著者もラベルのついた店をいくつか試してみました。料理の味はもちろんですが、とても印象に残ったのが店の雰囲気であったり陽気で温かい店員さんたちでした。中でも印象に残っているのが以下のやり取りです。
ある店で前菜が終わって、次の料理がなかなか来ず待っていると、一人のスタッフが近づいて来ました。
「残念なお知らせがあります。」と深刻な顔をして私に話しかけて来ました。
もしかして品切れか何かかなと思って身構えたところ、
「少し遅くなるけど、ちゃんと料理来ますから。」
と言って、さっきまでの悲しげな顔から一転して笑顔を私に向けました。つられて私も周りの人も笑顔になりました。
今日会ったばかりの隣の人と談笑して、美味しいものをたくさん食べて笑顔になって店を出る。値段にはならない価値がリヨン・ブショネにはある気がします。
