名城の数々で知られるロワール渓谷が生み出す食文化
トゥール(Tours)を州都としたかつてのトゥレーヌ(Touraine)州は、あらゆる種類の果物や野菜を栽培していることから「フランスの庭」とも呼ばれていました。その後3つの県に再編されましたが、今も変わらずロワール川が育む土壌はワインはもちろんのこと多くの特産品を生み出しています。今日はその一部を紹介したいと思います。
サント・モール・ド・トゥレーヌ(Sainte-Maure-de-Touraine)
薪のような風貌を持つこのチーズはヤギの乳でできていて、日本で売られているチーズと違って独特の匂いがします。中央にはしばしば型崩れを防ぐために麦わらを一本通してあるのも特徴です。見た目とは裏腹に食感は柔らかく、クリーミーな味わいでハマると癖になります。

リエット(Rillettes)
日本ではあまり馴染みのないですが、豚肉の加工食品でパンに塗ってよく食べたりします。豚のバラ肉などをみじん切りにして加熱した後にラードに閉じ込めて熟成したものです。

トゥールはこのリエットで有名ですが、電車で約1時間のところにあるル・マン(le Mans)も同じくリエットが特産品です。大きな違いはトゥールのリエットは同じくトゥレーヌにあるヴーヴレ(Vouvray)で作られる同名のワインを加えることです。そのため、リエットの色がル・マンのものに比べて若干黒ずんでいます。
どちらが美味しいか?それは永遠のテーマです。この2つのリエットは大阪と広島のお好み焼きのようにある種の対立関係にあります。もし、トゥールの人にどちらが美味しいかと聞かれれば、トゥールのリエットと迷わず答えましょう。
ル・マンの人に聞かれたら?
そう、もちろん、ル・マンのリエットです(笑)
一つ言えるとすれば、ル・マンもトゥールもリエットに並々ならぬ愛着と誇りを持っているということでしょうか。