クロード・モネの「サン・ラザール駅」
こんにちは。フランス政府公認ガイドの濵口謙司(@tourismjaponais)です。
今回の「おうちでフランス絵画」でご紹介するのはクロード・モネの「サン・ラザール駅(1877年)」です。オルセー美術館の所蔵で、大きさは縦75cm、横100cmの油彩画です。
パリのサン・ラザール駅(Paris Saint-Lazare)はジヴェルニーやオンフルールなど印象派の足跡をたどるための出発点となる駅です。
モネの絵というと睡蓮などの自然をテーマにした作品が多いのですが、当時の時代の流れを反映したパリの街並みも多く描いています。
この作品が生み出された頃は、産業革命の流れにより街の景色が急激に変わっていった時代でした。それと同時に鉄道網がフランス全土に広がるようになり、人々は旅行に出るようになりました。「観光」という概念が生まれ始めた頃です。
建築ジャンルとしての「駅」が生まれたのも19世紀になってから。つまり、駅はそれ以前は存在しなかった種類の建物でした。
技術の進歩により、それまでの石や木に代わり、金属やガラスなどの建築資材がもてはやされた時代でもありました。このサン・ラザール駅の駅舎はまさに当時の最先端の建築でもあったわけです。
鋼で組まれた構造で、屋根にはガラスがはめられたこの建物には蒸気機関車が発着していました。
汽車の蒸気、ガラス越しに入ってくる時間帯によって表情を帰る光、響き渡る様々な音・・・それらが作り出す雰囲気は、モネの関心を強く引いたのでしょう。実際に、モネはこの駅をテーマに12枚の絵を描いています。
ちなみに、この絵は同時代の印象派の画家カイユボットに絶賛されたそうです。