フランスの冬の定番料理シュークルート
こんにちは。フランス政府公認ガイドの濵口謙司(@tourismjaponais)です。
冬が来ると温かいものを食べたくなるのは、日本もフランスも同じです。フランスには冬に食べたくなる様々な家庭料理がありますが、今回はシュークルート(Choucroute)というフランス東部のアルザス地方の名物をご紹介したいと思います。
冬はストラスブールなどでクリスマスマーケットが開催されることからアルザスを訪れる方も多いと思います。アルザスはおいしい食べ物が多いのですが、シュークルートは王道中の王道と言えるのではないでしょうか。
目次
- アルザス地方の名物シュークルート
- シュークルートとは?
- 昔はシュークルートを作る日は祝日だった?
- シュークルートはどうやって作られる?
- シュークルートを食べるならやはりアルザス風で!
1. アルザス地方の名物シュークルート
シュークルートとは?
シュークルートは自然発酵によってできるキャベツの自然加工食品で、少し酸味の効いた味わいが特徴です。
アルザス語のSürkrütが由来のシュークルートは文字通り「酸っぱいキャベツ」と言う意味。フランスと国境を接するドイツの方ではザウアークラウト(Sauerkraut)とも呼ばれます。
加工食品であるシュークルートですが、シュークルート用のキャベツが収穫されるのが8月から11月にかけてとなるので、食べられる時期は秋から冬にかけてが一般的。そういった意味では食べられる時期は限られますが、緑の野菜が不足がちになる冬の寒い時期にはまさに打ってつけの料理と言えます。
昔はシュークルートを作る日は祝日だった?
シュークルートの起源についてはっきりとしたことは今も分かっていませんが、少なくとも中世には現在のアルザス地方で食べられ始めたと考えられています。
発酵させたキャベツは保存にも適していたことから、現在のフランス東部では古くからよくシュークルートが作られていました。ちなみに、16世紀にはキャベツを塩漬けする日はなんと祝日となっていたようです。
2. シュークルートはどうやって作られる?
アルザス地方ではフランスの約70%、年平均30000トンものシュークルートが作られます。アルザスのシュークルートは2018年にI.G.P.(Indication Géographique Protégée)と呼ばれるEUが規定する地理的保護表示のラベルを取得していることからも、アルザスがシュークルートの本場であることが分かります。

シュークルートを作るには、まずキャベツの外側の青い葉と芯を取り除きます。日本でよく食べられるキャベツとは種類が違い、アルザスでシュークルートに使われるキャベツの品種は限られています。
不要な部分を取り除いたキャベツは細く切り刻んで、塩をかけて馴染ませます。塩を使うのは保存のためであり、キャベツの中に含まれる水分を染み出させる効果もあります。
その後、積み重ねて圧縮し、香り付けのためのネズの実などの香料を入れ、容器に密閉してから常温で約3週間から1ヶ月発酵させて完成です。こうしてできたシュークルートは水洗いしてから、そのままあるいは加熱処理をしてレストランや食料品店で販売されています。
上の動画ではキャベツの収穫からシュークルートの製造までの過程を見ることができます。こちらは工場での製造の様子ですが、もちろん家庭で作ることもできます。
3. シュークルートを食べるならやはりアルザス風で!
こうして出来上がったシュークルートは食べる前に温めて、肉や魚などの添え野菜として出されます。食べ方は色々とあるのですが、ここはやはりアルザス風で味わいたいところ。アルザス風シュークルートといえばこういった豚肉の加工食品などと一緒に食べられます。
アルザス地方は食用の豚の飼育が盛んで、フランス語でシャルキュトリー (Charcuterie)と呼ばれる豚肉を中心とした加工食品のハム、ベーコン、ソーセージなどが名物として知られます。
その歴史は古く、ローマ時代にはすでにアルザス地方の街ストラスブールから燻製にした豚肉を送り出し、代わりにローマからは野菜や香草を受け取るという形で交易が行われていたようです。

また、アルザスでは伝統的に豚肉やその加工品が多く食べられ、19世紀までは一番消費されていた食肉だったとか。そういう歴史を考えると、アルザスでシュークルートとシャルキュトリーが一緒に食べられるのも納得ではないでしょうか。
シュークルートはアルザス地方だけでなく他の地方でも食べられるので、秋から冬にフランスを訪れる機会があれば、ぜひ味わってほしい一品です。
もちろん、アルザス風で!