ブルターニュの春の味覚、プルガステル産のイチゴ

3世紀にわたり栽培されるイチゴのルーツ

日本でイチゴの季節というと冬の終わりから春先にかけてですが、フランスのイチゴの旬の時期はそれより少し遅く、春の終わりから初夏にかけて。寒さが和らいだ4月下旬から5月になると、市場やスーパーなどには赤く色づいたおいしそうなイチゴが並びます。

フランスで食べられるイチゴには、スペインなどから輸入されたものもありますが、何と言っても国内産が人気です。その一つが、ガリゲット(Gariguette)で全国的に有名ですが、今回ご紹介するのはブルターニュ地方のプルガステル(Plougastel)産のイチゴです。その歴史を紐解くと、ブルターニュのイチゴの味わいがさらに増します。

ブルターニュとイチゴの知られざる関係

サン・マロにあるジャック・カルティエ像

古代よりヨーロッパでは野イチゴを食していましたが、私たちの知る姿のイチゴがフランスにもたらされたのは近世になってからのこと。16世紀末に、ブルターニュ地方の港町サン・マロ出身の探検家のジャック・カルティエ(Jacques Cartier)が最初のイチゴの苗をもたらしたと言われています。ちなみに、彼は初めてカナダに到達したことでも知られ、現在のフランス語圏であるケベック州のフランスの領有を基礎を築いた人物でもあります。

現在フランスで栽培されているイチゴの直接の祖先がもたらされたのはそれから少し後の18世紀になってから。ルイ14世の軍事技師であったアメデ・フランソワ・フレジエ(Amédée-François Frézier)は、当時スペインの支配下にあったチリやペルーの要塞や港の調査やスパイ活動をしていました。表向きは植物探査だったその活動の際に、チリより5本のイチゴの苗を持ち帰り、フランス南部のマルセイユより入港したのです。

チリ原産のイチゴ(Gallica BNFより)

このイチゴは「チリの白イチゴ(Blanche du Chili)」と呼ばれるように文字通り白いイチゴです。フレジエは「ヨーロッパの野イチゴに比べると味がなく、クルミのように大きく、ものによってはニワトリの卵ほどの大きさだ」と若い植物学者に充てた手紙で自らの発見を語っています。フレジエが持ち帰ったイチゴの苗はマルセイユやパリの王宮の庭、そしてブルターニュ地方ブレストの植物園に植えられました。その後、彼は1739年からブルターニュの要塞を仕切る長官になりました。

もっとも、ブレストに新種のイチゴを直接持ち込んだのはフレジエではないという説もあります。1734年にブレストで地震があり、海軍病院の薬草の庭が大きな被害を受けました。再建にあたって、パリの王宮庭園より持ち込まれた植物の中にフレジエがもたらしたイチゴが紛れ込んでいたのではないか・・・という話です。真相はともかく、フレジエがもたらしたイチゴがブルターニュに根付いたということだけは確かです。

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