ノルマンディーの「エトルタの庭」で現代アートと絶景を楽しむ

モネが描いたエトルタの断崖を望む庭園

ノルマンディー地方はもちろん、フランス屈指の素晴らしい景色が広がるエトルタ。英仏海峡に沿って続く白亜の断崖は、昔から多くの人々を魅了してきました。その中には、クロード・モネの姿もあり、彼はエトルタを描いた作品をいくつか残しています。また、エトルタは、同時代を生きた小説家クロード・ルブランの「アルセーヌ・ルパン」シリーズの舞台として何度も登場した場所としても知られています。

エトルタには絶景ポイントがいくつかありますが、ぜひ訪れてほしいのが「エトルタの庭(Les Jardin d’Étretat)」。景色を楽しめるのはもちろんですが、現代アートが散りばめられた美しい庭園を歩くと、時間が経つのを忘れてしまいます。

モネと「庭友達」の女優が作り始めた庭園

エトルタの断崖

モネというと、画家であるということはよく知られていますが、実は庭に対する関心と情熱も並々ならぬものでした。ジヴェルニーに残された自宅の庭園で見られる色とりどりの花の数々は、優れた庭師としての側面を証明するものと言えるでしょう。そんな彼が、庭という共通の話題を通じて親交を深めたのが、マダム・テボー(Mme Thébault)という女性でした。

有名な喜劇女優であった彼女のエトルタの邸宅は「ロクセラーヌ(Roxelane)」と呼ばれていました。日本語では「ロクセラーナ」と訳されることもあるこの名前は、オスマン帝国のスレイマン1世の皇后の呼び名から来たもの。彼女の数奇な運命は数多くの劇や映画で描かれています。元々は奴隷として売られ宮中に入った彼女は、あらゆるライバルを押しのけ、皇帝の寵愛を一身に受けるようになると、やがては帝国そのものを操るまで登りつめました。

そんなロクセラーヌの波瀾万丈な人生を映画で演じたことで、マダム・テボーは女優としての地位を高め、スターダムにのし上がりました。彼女の家は、そんな愛着のある女性の名前に由来しているというわけです。

モネの描いたエトルタ「Grosse mer à Etretat」(オルセー美術館収蔵)

現在の「エトルタの庭」となっている邸宅の隣にある庭園は、1903年に最初の植樹が行われました。モネの庭に感銘を受けていたマダム・テボーは、邸宅とともに完成した庭園をとても大事に世話していました。時には、モネが彼女を訪ねてきたこともあったようです。モネと親交のあった作家のモーパッサンもエトルタに別荘を構えていたこともあり、モネにとってのエトルタは、美しい景色を描くだけではなく、友人たちと旧交を温める場所でもあったのかもしれません。ちなみに、モネのエトルタの断崖の絵はロクセラーヌの庭園にあるテラスのある場所から描かれたものです。