モン・サン・ミッシェル修道院の教会の屋根の上から見る絶景

モン・サン・ミッシェルの「レース飾りの階段」から息をのむほどの絶景を

こんにちは。フランス政府公認ガイドの濵口謙司(@tourismjaponais)です。

708年の司教オベールが創建して以来、約1300年もの長い歴史を持つモン・サン・ミッシェルの修道院。長い間変わらない姿を保っているように思われがちな修道院ですが、実は時代と共にその姿を変えてきました。そして、21世紀の今もなお絶えず修復作業が続けられています。

その長い歴史の間に積み重ねられた石の数々の中には、いまだに私たちが知らない多くの謎が身を潜めています。実は、通常の見学コースで見ることができるのは修道院のほんの一部に過ぎず、公開されていない部屋や場所が数多くあります。

今回は通常拝観では見られないモン・サン・ミッシェルの知られざる姿をご紹介します。

モン・サン・ミッシェル修道院付属教会の屋根の上へ

ピラミッドの形をしたモン・サン・ミッシェルの頂上に位置する大天使ミカエル(フランス語でサン・ミッシェル)の像は、地上170メートルの高さから途切れることなく訪れる観光客を見守っています。

すでにモン・サン・ミッシェルを訪れたことのある方の中には、金色に輝く像を近くで見てみたいと思った方も多いはずです。

実は、普段は公開されていないのですが、高さ80メートルに位置する修道院付属の教会からは建物の上層つながる螺旋階段があります。この階段を登っていくと、さらに一つ上の階層にたどり着きます。そこには、祭壇のある建物の東側の上部にある高窓に沿ってテラスが広がっています(下の写真の緑の矢印の部分)。

モン・サン・ミッシェル修道院

ゴシック教会建築の秘密を間近で見る

教会の高窓がすぐそばに見える高さにあるテラスからさらに上を見上げると、たくさんのアーチが空中に架けられています。このアーチは「フライングバットレス(飛梁)」と呼ばれ、文字通り空を飛ぶかのように空中に架けられていて、建物を外側から支えています。

これはゴシック建築の特徴でもあり、パリのノートルダム大聖堂など多くの同時代の大きな教会に見られます。これは屋根の重さから来る推力(横に広がる力)によって建物が崩壊するのを防ぐために横から支えるつっかえ棒のような役割を果たしています。

モン・サン・ミッシェル修道院付属教会のフライング・バットレスと尖塔
フライング・バットレスと小尖塔

このフライング・バットレスのある部分を遠くからみると、このアーチの下端のからは小さな尖塔が上に伸びています。この尖塔は、簡単に言うとつっかえ棒が外れないように重しの役割を担っています。

遠くから見ると、これらの小尖塔群は森のように教会を覆っていて、ゴシック建築の教会の独特の雰囲気を生み出しています。実は装飾的なだけでなくとても機能的でもあるのです。

ついに「レース飾りの階段」へ

フライング・バットレスが頭上に広がる森を抜けて、さらに螺旋階段を登り上階へ。

その先には教会の屋根を囲むように広がるテラスへと続く階段があります。「レース飾りの階段(escalier de dentelle)」と呼ばれるこの階段は、手すりの部分が彫刻で作られたレースのように切り取られ、洗練した佇まいを見せています(本記事1枚目の写真の赤い矢印の部分)。左右には視界を遮るものはなく、見上げるとそこにあるのは空と大天使ミカエルの姿だけ。

モン・サン・ミッシェルの修道院付属教会のレースの階段
「レースの階段」

「レースの階段」を登り切ると、屋根の高さからモン・サン・ミッシェルの全景はもちろんのこと、モン・サン・ミッシェル湾の全景を一望できます。

先ほどまで見上げていたフライング・バットレスや尖塔、「西洋の奇跡」と呼ばれる13世紀初頭に建てられたラ・メルヴェイユの棟、村の家並み、シャトルバスを待つ多くの観光客たち・・・それらすべてが大天使ミカエルとほぼ同じ視線で眺めることができます。

大天使ミカエルはきっとこんな風にいつも世界中から来る私たちの姿を見守っているんでしょう。

モン・サン・ミッシェルの修道院付属教会の屋根からの眺め
モン・サン・ミッシェルの修道院付属教会の屋根からの眺め

地上110メートルの「レースの階段」の先に広がる光景は、まさに息をのむほどの美しさで、モン・サン・ミッシェルの修道院を一度訪れたことがある方でも新たな発見があるはずです。

そこには空と海、そして人知が生み出した建築が生み出したモン・サン・ミッシェルでしか見られないものだからです。

「レースの階段」を見学するには?

今回ご紹介した場所はモン・サン・ミッシェル修道院が主催するフランス語のガイドツアー<Dans le ciel de l’archange>でのみ見学ができます。

毎週土日の開催で定員は18名。事前予約が必須となっています。