現代アート作品のコレクター、フランソワ・ピノー氏とレンヌのつながり

Jeff Koons Bourgeois Bust - Jeff and Ilona, 1991 Damien Hirst Death’s Head, 2011

1万点を越す現代アート作品のコレクションのはじまりはレンヌから

ピノー・コレクションとブルターニュ

グッチ、イヴ・サン・ローラン、プーマ・・・どのブランドも一度は聞いたことがある名前かと思います。実は、これらは全てケリングというファッション業界の大手企業体によって運営されています。

このケリングの創業者が、世界でも有数の資産家でもあるフランソワ・ピノー氏。実業家として大成功を収めた彼はフランス北西部ブルターニュ地方にあるトレヴェリアンという小さな町で1936年に生まれました。

16歳で故郷を離れ、林業などで成功を収め、1999年には高級ブランドへと事業をシフトしていきました。そんな彼が美術品を収集し始めたきっかけは、ポール・セリュジエの一枚の絵でした。

19世紀末に活動したナビ派の画家が描いたブルターニュ地方の農家の中庭の景色をいたく気に入り、購入を決意。そこから、抽象画やキュービズム、そして現代アートへと関心を広げ、それに伴い「ピノー・コレクション」が形成されていきました。現在、彼の有する作品の数は1万点を超えるそうです。

レンヌとピノー・コレクションの深い縁

レンヌはピノー氏の生まれた町のあるブルターニュ地方のイル・エ・ヴィレーヌ県の県庁所在地です。実は、ピノー・コレクションの記念すべき1点目である前述のセリュジエの絵を買ったのがレンヌでした。

また、レンヌは現在ケリングを率いるピノー氏の息子のフランソワ・アンリの生まれた場所。さらには、ピノー氏はフランスの1部サッカーリーグに属するレンヌのチームの会長でもあります。

こうしたことから、2018年の夏にレンヌでピノー・コレクションの展覧会「Debout!(立って!)」が開催されたことは自然な流れと言えると思います。ちなみに、この展覧会は大成功を収め、約10万人の入場者を記録したそうです。

今年開催される「Au-delà de la couleur(色彩の向こうに)」は、もともと2020年の夏に予定されていたものが、コロナウイルスの感染拡大の影響で今年に延期されたもの。ピノー・コレクションから「白と黒」をテーマに選りすぐった100点を越す作品の数々で鑑賞できます。

2021年は5月にパリのブルス・ドゥ・コメルス(Bourse de commerce)にピノー・コレクションの専用の美術館がオープンしたばかりですが、レンヌで6月から開催されている展覧会に展示されている作品の中には、ジェフ・クーンズやマウリツィオ・カテランといった21世紀の現代アートシーンを代表する顔ぶれも。ここからも、

レンヌ市は今後も定期的にこうした大きなアートの展覧会を開催していく意向で、2018年、2021年に続いてまたピノー・コレクションの展覧会がレンヌで見られるかもしれません。今年の展覧会は始まったばかりですが、次の展覧会が今から楽しみですね。