オーギュスト・ルノワールの「ムーラン・ド・ラ・ガレットの舞踏会」
こんにちは。フランス政府公認ガイドの濵口謙司(@tourismjaponais)です。
今回の「おうちでフランス絵画」でご紹介するのはオーギュスト・ルノワールの「ムーラン・ド・ラ・ガレットの舞踏会(1876年)」です。フランスのパリにあるオルセー美術館所蔵の油彩画です。
ルノワールの代表作の一つでもあるこの絵は、画像では伝わりませんが、縦135cm、横175cmとかなり大きな絵です。当時はその大きさは歴史画などのジャンルにおいて使われることが一般的で、このような市民が主役となったテーマの絵を描くということはかなり野心的な試みでした。
この絵はパリで一番高い丘にあるモンマルトルにあった野外のレストラン・カフェことガンゲット(guinguette)が舞台となっています。パリから全国に広がったガンゲットは、人々は飲食だけでなく、踊って楽しい時間を過ごす市民の社交の場でもあります。
モンマルトルにはかつて多くの風車があって、そこで轢いた粉を使ってガレットと呼ばれるライ麦のパンが作られていました(ちなみに、ガレットというと、ブルターニュ地方の名物のソバ粉のクレープを思い出す方もいらっしゃると思うのですが、フランス語では丸くて薄いケーキや菓子を指す場合にも使われます)。
絵のタイトルの「ムーラン・ド・ラ・ガレット(Moulin de la galette)」は直訳するとガレットの風車で、モンマルトルにある風車のこと(現在も一つは保存されています)。1870年頃にオーナーがガンゲットを開いた後は、日曜日の午後になると、近くに住んでいる人たちが集まって踊っていました。
この絵の中にはルノワールの友人たちも描かれています。ルノワールは現場で描くことにこだわったため、キャンバスを運ぶのを手伝ってもらったとか。
木漏れ日の中で、音楽に合わせて踊る人たちや会話に花を咲かせる人たち。喜びに満ちた彼らの表情。この絵を見ると私たちも幸せな気分になりますね。