クロード・モネの「印象、日の出」
こんにちは。フランス政府公認ガイドの濵口謙司(@tourismjaponais)です。
今回の「おうちでフランス絵画」でご紹介するのはクロード・モネの「印象、日の出(1872年)」です。
フランスのパリにあるマルモッタン・モネ美術館に所蔵されている作品で、大きさは縦50cm、横65cmの油彩画です。
1872年の秋にノルマンディーの港町ル・アーヴルで滞在していたモネ。この絵は彼が早朝にホテルの自室から見た景色を描いたものです。
もやでかすむ港の景色の前方には船影が見え、後景には波止場や船のマストなどの影が見えます。そして、絵のやや中央の太陽が海を朝焼けで染めていく・・・そんな刹那を切り取っています。
この絵は若き日のモネやルノワール、ドガなどが1874年に自ら開催した展覧会に出展されました。展覧会のカタログ作成の際にタイトルをつけるように言われたモネは「印象」という言葉を口にします。
19世紀前半までのフランスの絵画は芸術アカデミーが絶対的な権威でした。静的で精密な歴史画や宗教画が良きとされていた時代において、まさにある瞬間の「印象」を描いた風景画は多くの人にとって斬新でもありました。
「印象、日の出」を鑑賞した記者は「未完成の壁紙がましだ」と切り捨て、軽蔑的に展覧会を「印象派の展覧会」と名付けました。印象派はこうして誕生しました。「印象、日の出」は当時の新進気鋭の画家だったモネたちの運命を決める一枚となったのです。