フランスパンことバゲットはなぜ硬くて長いのか?

フランス人も知らない?フランスパンの歴史

こんにちは。フランス政府公認ガイドの濵口謙司(@tourismjaponais)です。

フランスの街を歩くと、フランスパンを持って歩く人をよく見かけます。フランスパンと一口に言っても色々な種類がありますが、一般的にフランスではバゲット(baguette)と呼ばれています。

日本だけでなく他の国でも「フランスのパン」として認知されているように、バゲットは正真正銘フランスで生まれたパンです。

そんなバゲットといえば、細長い形をした硬いパンというイメージが一般的だと思います。しかし、実は昔はバゲットは丸かったというのはご存知ですか?時代の流れが今の形のバゲットを生み出したのです。

今回はそんなバゲットにまつわる秘密をご紹介します。

目次

  1. 昔は丸かったフランスパンを細長くしたのはナポレオン?
  2. 新しい労働法の制定によって現在のバゲットの姿に
  3. バゲットがユネスコの無形文化遺産に?

1. 昔は丸かったフランスパンを細長くしたのはナポレオン?

ナポレオン

古代からエジプト、ギリシャ、ローマなどでは既にパンが作られていたと考えられています。その伝統は中世から現在に至るまで続いていきますが、フランスでは18世紀までは現在のバゲットのような細長くて外面が硬いパンはありませんでした。

現在のような形になった理由として2つの説が有力です。

一つ目の説は、ナポレオンが兵士たちが運びやすいようにパンを細長くすることを望んだのではないかと。細長くすることでズボンのポケットに入れて持ち運びを容易にするためというのがその理由です。

もう一つの説は、実は細長いパンはフランスではなくオーストリアのウィーンで発明され、19世紀にオーストリア人企業家オーギュスト・ザング(Auguste Zang)がパリのリシュリュー通りにBoulangerie viennoiseというパン屋を開いたのが始まりだという説です。

このパン屋は大成功を収め、今でも菓子パンの総称をウィーンから名前をとったviennoiserieと呼ばれる由来にもなっています。彼の作ったパンはビール酵母を使った細長いパンだったそうです。

2つの説のうちどちらかが正しいのかは分かりません。しかし、いずれにせよ、19世紀に細長くなったパンですが、保存があまりきかないこともあり、貴族階級にもてはやされただけで大衆に普及したとは言い難かったのは確かです。

2. 新しい労働法の制定によって現在のバゲットの姿に

バゲット

19世紀に生まれたバゲットの先祖が現在の形になったのは第一次世界大戦後のことでした。新しい労働法によって朝4時より前にパン職人が働くことが禁じられました。従来、丸いパンは準備に時間がかかるのに対し、細長いパンは全ての過程において時間を短縮できるため、後者が好まれるようになりました。

また、値段を下げるために材料として牛乳を使わなくなりました。結果として生まれたのが外がカリカリで硬く、中がもちもちと柔らかい現在のバゲットです。

食パンなどと比べても長持ちは相変わらずしませんが(大抵の場合買った翌日には食べないと硬くて食べられなくなります)、結果として焼きたてのパンを買いにお客さんがすぐに戻ってくるようになりました。

こうして現代のフランス人の日常生活にバゲットは欠かせないものとなっていったのです。現在では大きさや重さが決められており、それに応じた色々な名称のバゲットが存在します。

3. バゲットがユネスコの無形文化遺産に?

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2018年1月にフランス大統領エマニュエル・マクロンがエリゼ宮にパン職人を迎えて、年始恒例の伝統である巨大なガレット・デ・ロワを囲んだ会を行いました。

その中で2017年にナポリのピザ職人の技がユネスコの無形文化遺産に選ばれたことを引き合いに、バゲットの伝統や技術もそれに値すると評しました。大統領自らの後押しが、バゲットの世界遺産入りを目指す動きに拍車を掛けることでしょう。

ワイン、チーズなどと並んでフランスを象徴するバゲットは今では世界中で認知されており、世界遺産になる日もそう遠くないかもしれません。

ぜひフランスに来た際は朝パン屋さんに行って焼きたてのバゲットを味わってみてはいかがでしょうか?