将来モナ・リザがパリからルーヴル・ランスに貸し出される?

1974年を最後に旅することをやめた「モナ・リザ」の旅行記

フランスの都パリにあるルーヴル美術館にある一室には館内で一番大きい絵画「カナの婚礼」があります。大きさは縦670㎝、横990㎝。まさに壁一面を覆うこの絵は、キリストの奇跡について描いたルネサンス期のイタリア人画家ヴェロネーゼの作品の一つです。

そんな大作が後ろにあるのにも関わらず、訪問者の視線をいつも独り占めしているのがその向かい側にある絵画「モナ・リザ(フランス語ではla Joconde)」です。かつて盗難にあったことから警備は厳重で、絵がガラスで覆われているばかりでなく、近づけないように囲いがされており、さらには警備員が目を光らせています。

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ルーヴル美術館の三大貴婦人の一人でもあるこの絵は縦が77㎝、横が53㎝です。日中に行くと多くの人に囲まれていることもあって、実際に遠くから本物を目にすると想像しているよりも小さく感じられます。

「モナ・リザ」は世界で一番有名な絵であるにも関わらず、謎が今だに多く、美術史家たちは議論を止めようとしません。レオナルド・ダ・ヴィンチが描いたこの絵は、多くの逸話も手伝って、西洋美術史に名を刻む数々の名画や彫刻の中にあっても圧倒的な存在感があります。皆さんは「モナ・リザ」のないルーヴル美術館を想像することができますか?想像できないという方が大半なのではないでしょうか。

「モナ・リザ」がルーヴル・ランス美術館に?

現在ではルーヴル美術館の顔である「モナ・リザ」は門外不出であるというのが美術館関係者の暗黙の了解です。しかし、2018年1月末にフランソワーズ・ニセン(Françoise Nyssen)文化大臣(当時)の発言が思わぬ形で議論を呼ぶことになりました。

「ルーヴル美術館は移転させられないでしょうが、なぜモナ・リザやバイユーのタペストリーを移動させることが禁じられているのでしょうか?」

発言の直後、すぐに「例えばの話」であるとつけ加えたようですが、時すでに遅し。ルーヴル・ランス美術館のあるランス(Lens)の市長はすぐにフランス大統領エマニュエル・マクロンに「モナ・リザ」の貸与を求める手紙を出しました。これはルーヴル・ランス美術館の創建当時からの悲願の一つでもあったからです。

この一連の流れに刺激されるかのように、ルーヴル・ランスに「モナ・リザ」をという機運が一気に高まります。SNS上では「#LaJocondeaLens(#モナ・リザをランスに)」というハッシュタグが溢れ、ついには現在はフランスリーグ2部に所属する熱狂的なサポーターで知られるランスのサッカーチームの試合には下の写真のような横断幕が掲げられました。