フランスの北の都リールでフランドルの芸術と建築を満喫しませんか?

ブリュッセルから約半時間、ロンドンから約1時間半の国際都市リール

こんにちは。フランス政府公認ガイドの濵口謙司(@tourismjaponais)です。

パリから高速鉄道TGV で約1時間のところに位置する街、リール(Lille)。フランス北部ノール県の県庁所在地でもあります。

ベルギーの国境にも近く、フランスでありながら、どこかベルギーやオランダに通じる雰囲気が漂います。実はかつてベルギーやオランダなどを含むフランドル伯爵領でもありました。

その後、ブルゴーニュ伯、スペインなどの統治下に置かれた後、1667年にルイ14世によってフランスに併合されるのですが、隣の国々と長い年月をかけて共有した伝統が今も息づいています。

目次

  1. コントラストを成すリールの2つの玄関口
  2. 歴史的建造物が彩る街の中心グランプラス
  3. フランスで2番目に大きい美術館と世界遺産の鐘楼など見所がたくさん

1. コントラストを成すリールの2つの玄関口

リールにはリール・フランドル(Lille-Flandres)駅とリール・ユーロップ(Lille Europe)駅という2つの駅があります。

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リール・ユーロップ駅前のフランソワ・ミッテラン広場

前者が主にフランス国内線やノール・パ・ド・カレ(Nord Pas-de-Calais)地方の電車の発着地ならば、後者はそれに加えイギリスやベルギー、オランダからの玄関口と言えます。

リール・フランドル駅の正面部分はかつてのパリの北駅を解体し組み立て直したもので、19世紀の鉄道開通当初の面影を残しています。

駅からは街の中心の大広場であるグラン・プラス(Grand’Place)につながる道がまっすぐ伸びていて、ベルギーとフランス北部にまたがるかつてのフランドル伯領の栄華を思わせる鮮やかな色使いの建物が軒を連ねています。

それに対しリール・ユーロップ駅は曲線を描いた屋根とガラスの壁面が印象的な現代的なデザインです。駅を出るとフランソワ・ミッテラン広場(Place François Mitterrand)には現代建築の巨匠ジャン・ヌーベルやクリスチャン・ド・ポルザンパルクの建物とともに直島の巨大カボチャでも有名な草間彌生の花のオブジェがそびえ立っています。その現代的なイメージはリール・フランドル駅とは対照的です。

これらのリールの2つの駅のどちらから出るかで街の最初の印象はガラリと変わります。しかし、その2つともリールの持つ顔で、フランス国内外から多くの人がやって来る躍動感に溢れるリールという街を象徴していると言えます。

さて、街の中心に出てみましょう。

2. 歴史的建造物が彩る街の中心グランプラス

リール・フランドル駅から伸びる道に沿ってまっすぐ歩くと劇場広場(Place du théâtre)に辿り着きます。そこを左に曲がればリールを観光する際に外せないのが通称グラン・プラスことジェネラル・ド・ゴール広場(Place du Général de Gaulle)です。

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劇場広場(Place du théâtre):左手は旧株式取引所、右手は商工会議所。写真には写っていませんがさらに右には劇場があります。

パリ郊外にある国際空港の名前でもあり、各地のその名前を冠した通りや広場があるシャルル・ド・ゴール。第二次世界大戦中はイギリスで亡命政府を率い、戦後は大統領となった現在のフランスの政治体制である第五共和政の創始した人物です。

実は、シャルル・ド・ゴールは1890年にここリールで産声をあげました。彼の生家は現在も保存されていて見学ができます。

そんなフランスの英雄の名を持つ広場は17世紀から20世紀のリールの建築物が一同に会する博物館のような場所でもあります。中でも最も美しいと言われるのが17世紀半ばに建てられた旧株式取引所(Vieille Bourse)です。

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グラン・プラスことシャルル・ド・ゴール広場:右手には旧株式取引所が見えます。

24の全く同じ形の建物が回廊を形成され、黄色を基調に赤でアクセントをつけた様々な彫刻で彩られた建物はフランドル地方のルネサンス建築の代表例と言えます。中庭では定期的に古本市が開かれているので、思い切って建物の中に入ってみることをオススメします。

3. フランスで2番目に大きい美術館と世界遺産の鐘楼など見所がたくさん

リールにはグラン・プラスの他にも見所はたくさんあります。リール旧市街(Vieux Lille)にはレンガを使った古い建物が多く残っていて、日曜には観光案内所がフランス語の他にも英語でのガイドツアーを行なっています。また旧市街にはリール市民なら誰もが知っているスイーツのメルヴェイユー(Merveilleux)の店があるので是非試してみてください。

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メルヴェイユー

また、パリにある美術館に次いでフランス2番目の展示規模を誇るリール宮殿美術館(palais des beaux arts de lille )ではヴァン・ダイク、ドラクロワ、ルーベンスなどのヨーロッパの巨匠の名画を鑑賞できます。宮殿美術館と呼ばれるだけあり、19世紀に建てられた建物はもし美術館に入る時間がなくても見る価値があります。

もちろん世界遺産に指定されている鐘楼も必見。1929年からわずか2年で建てられたリールの鐘楼はフランスで初めて100メートルを超えた建築物で、国内における高層ビルの先駆けとも言えます。展望台からのリール市街の眺めは絶景です。

また、ほぼ同時期に建てられた鐘楼の麓にある市庁舎(hôtel de ville)は内部構造には当時の最新技術であった鉄筋コンクリートを使いながらも、フランドル地方の建築の歴史に敬意を表し外壁にはレンガを使い、17世紀の街並みを思わせる佇まいを見せています。

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リールの鐘楼と市庁舎

散歩を楽しんだ後は、レストランが並ぶグラン・プラスに戻って郷土料理に舌鼓を打ちましょう。リールのあるノール・パ・ド・カレ地方は地ビールの種類が豊富で、ウェルシュなどのビールを使った料理もあるほどです。地元の料理は種類が豊富なので、何度来ても出会ったことのないフランドル地方の味覚を楽しめること間違いなし!

気がつけば2度目、3度目のリール観光のリピーターになっているかもしれませんね。