一度食べると誰もがハマるラ・ベル・イロワーズの缶詰の秘密

ブルターニュ産の最高のアペロのお供を持ち帰ろう!

こんにちは。フランス政府公認ガイドの濵口謙司(@tourismjaponais)です。

ブルターニュ南部のモルビアン県(Morbihan)にあるキブロンという街があります。海に囲まれた半島に位置するキブロンは、900メートルに渡って広がるビーチを目当てに夏はリゾーチ地として賑わいます。

キブロンでバカンスを満喫した後に、多くの観光客が手土産に買っていくのが缶詰会社ラ・ベル・イロワーズ(la belle-iloise)の製品です。伝統的にイワシ漁が盛んな港町に本拠を置くこの会社。彼らのイワシやツナの缶詰がここまで多くの人を引き付けるのはなぜなのでしょうか?

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ラ・ベル・イロワーズの鯖缶(写真中央)

ラ・ベル・イロワーズの味へのこだわりが生み出した流通システム

キブロン発の缶詰の人気の秘密は味はもちろんその流通システムにあります。実はラ・ベル・イロワーズの缶詰はスーパーで買うことはできません。フ

ランスの海沿いの地方やレンヌなどのブルターニュ地方、そしてパリ、リヨンなどにある65の直販店(2017年2月現在)、もしくは通販でのみ購入が可能です。これは1932年に会社を創業したジョルジュ・イリエ(Georges Hilliet)の商品の質へのこだわりが生み出した一つの流儀です。

創業当時フランスの海岸沿いには100近くの缶詰会社がありました。しかし1860年代になると統廃合が進みスーパーなどを中心に大量に卸売をする大手の会社が生まれます。

しかし、そんな時代の流れの中にあっても、ジョルジュ・イリエにとってスーパーのために量より質を優先した缶詰を作るという選択肢は論外で、「必要なら、自分で海辺にイワシの缶詰を売りに行く」と豪語したそうです。

こうして、彼は1967年にキブロンにラ・ベル・イロワーズの最初の直売店を出しました。工場からの直販店を通して販売するという方法は旧来の流通システムとは一線を画するもので、製品の質を保ち、独自のノウハウを守りつつも、顧客との長きに渡る信頼関係を守ることを可能にしました。

家族経営だからできることでもあり、現在は彼の孫が祖父の意思を継いで3代にわたって伝統を守り続けています。

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ラ・ベル・イルワーズの直営店

一度食べたら忘れられない味の秘密

商品の写真を使わずに中身が一目で分かるデザイン性の高いラ・ベル・イロワーズの缶詰は基本的にはバラ売りでは販売されておらず、3〜5個のセットで釣りの網を想起させるネットに詰めて店頭に並んでいます。

スーパーで売っているものに比べても少し値段が高めに設定されており、1セット10ユーロから20ユーロ弱で売られています。1ユーロ120円として一つあたり240円から500円といったところでしょうか(ちなみに、日本でも通販で買えますが1個あたり1000円くらいします)。その値段設定にもかかわらず根強い人気を誇るのはやはりその味にあります。

下の3つの動画はラ・ベル・イロワーズがどのように缶詰を作って直販店に届けているのかを紹介したものです。

特徴的なのは、彼らは冷凍の魚を使わずに水揚げした魚をそのまま工場に運んで骨取りなどは手作業で加工することです。そのため、漁獲が多い最盛期には季節労働者で増員した350人体制で製造に取り組む反面、嵐などの悪天候の時には朝6時に従業員に電話をして作業の中止を知らせるそうです。

こうした品質への強いこだわりを持って製造された缶詰は、自らの直営店に届けられます。店頭では、いくつかの缶詰がパンとともに試食ができるようになっているので、自分の舌で味を確かめたものを買うことができるのもうれしいところ!

毎年研究を重ねた新製品が出るので、創業以来多くのフランス人に彼らの食文化に欠かせないアペロ(食前酒)のお供として重宝されています。もちろんお土産としても最適です。

ブルターニュ地方を旅行した際は、ぜひ日本に持ち帰ってお酒のおつまみやサンドウィッチの具材などとして、キブロンの海の恵みを味わってみてください。